凄まじい衝撃だった。
大脳皮質が痙攣を起こすほどの、美味。どこまでも深く、果てしなく広がる味わい。いちど記憶に刻み込んでしまえば、病的なまでに欲してしまうひと匙。もう、手放すことも、忘れることもできはしない、紅い稲妻。
戒めとして、また備忘録として書き残しておかねばなるまい。
夏の日に、畑の隅やプランターで、いくつもの品種の唐辛子を育てた。タカノツメのように激しく辛いものからピーマンの如きまでさまざま。これをあれこれと料理に使ったり「唐辛子味噌」として漬込みしたり….。
そのひとつ。
醤油麹に漬込んだ青唐辛子を食してみたら、感動を超えた「たましいの波動」とも言うべき味わいであったのだ。なのに、漬込む量が満足できるレベルではなかったため、この自家製調味料は、まもなく底をつく。これは僕の食卓における喜びを百分の一にしてしまう事実である。このような愚を重ねないため、来年はキロ単位で漬込もうという抱負を高らかに叫び、ここに記す。
これが収穫された青唐辛子の一部。いまとなって思えば、唐辛子味噌やピクルスや、そんなくだらない用途に消費するべきではなかった。全量を、醤油麹に漬込むべきであったのだ。
これが醤油麹に2ヶ月に渡って漬けられた青唐辛子。再び書くが、庭の青唐辛子に留まらず市場八百屋に入手可能なすべての青唐辛子をこうするべきだったのだ。
醤油麹から引き上げられた青唐辛子。醤油麹とは、醤油に麹を浸して寝かせたもの。常温保存が可能な調味料で、肉や魚などを漬けておけば焼いて良し、炙って良し。牛蒡や人参などを漬ければ極上の漬物が出来上がる。生なのに牛蒡のえぐ味などは消し去られてしまう不思議な麹の仕事。
この「醤油麹」に漬込まれた青唐辛子をフードプロセッサーで加工する。
ぎゅいぃぃぃぃぃん。
瓶に詰めて保存する。保存するはずだったが、消費が速い。どんどん減る。家人がこっそり使っていたりすることも発覚し、騒ぎにもなる。そして間もなく、底をつく。
塩だけで味付けした豚小間肉とセロリの炒め物。ここに醤油麹に漬込まれた青唐辛子のペーストを添えると、魔界が口を開く。異次元に引き込まれる。
ベースが醤油、そして麹だ。完全な和食の世界に位置づけられるのだ。冒頭に掲げた大根の煮物。これは庭の大根だ。それを昆布を敷いてことことと炊き、白出汁と醤油で味付けしてある。ここに、合うのだ。響き合うのだ。支那には豆板醤などという辛み調味料があるが、あのようながさつで粗暴な味わいではなく、たましいも大脳も、ぷるぷると震わせてくれる味わいなのだ。
来年は、入手可能なすべての青唐辛子を、こうしよう。まちがっても量を抑えたり、するまい。
醤油麹ですか、聞いたことはありますが初めて目にしましたよ。
なんにでも合う調味料らしいですが、いまさんの作ったのはマーボー豆腐で
いけそうな気がします。鶏モモ肉に合いそうですな。
今日はもうヘロヘロですからなんですけど。
お師匠、こいつを御鶏様に添えて食すと官能の味わいですよ。
豆腐、湯葉、そういう大豆系もしっかり抑えてあります。
来年は大量に仕込みまして送ります。ご期待ください。
昨日の雪は止みました。なので山越えルートでカブ走行を楽しんできます。